今回は、米津玄師さんの「海の幽霊」の歌詞の意味について解釈&考察をしていきたいと思います。
この曲は、アニメ映画『海獣の子供』の主題歌として書き下ろされた楽曲。この歌詞には一体どんな意味が込められているのでしょうか?
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米津玄師「海の幽霊」はどんな曲?
「海の幽霊」は、2019年6月7日に公開された劇場アニメ映画「海獣の子供」のために米津玄師さんが書き下ろした楽曲。
曲中では「大切なことは言葉にならない」というラインを含んだ歌詞をつづり、映画のキャッチコピーである「一番大切な約束は、言葉では交わさない」にも通づる世界観を表現しています。
まるで”夏の幻”のような切なさと、壮大な世界観(私たちの知らないどこか別の世界)を感じて、無意識に涙が出てしまう・・・。そんな楽曲です。
「海の幽霊」のジャケットイラストは、原作者である、五十嵐大介さんが描き下ろしたとのこと。
今までのジャケットはすべて米津玄師さん本人が書き下ろしたイラストになっていましたが、「海の幽霊」だけは初めて依頼したそうです。
このイラストを見ただけでも、壮大かつ繊細な世界観を感じることができます。何とも神秘的で、楽曲に引き込まれていきそうです。
アニメ映画「海獣の子供」詳細・原作は?
2019年6月7日に公開される映画「海獣の子供」は五十嵐大介の同名コミックスをSTUDIO4℃がアニメーション化した映画作品です。
他人とうまく接することができない中学生の少女・琉花が、ジュゴンに育てられた不思議な2人の少年・「海」と「空」に出会う海洋ファンタジーとなっています。
海で起きるほとんどのことは、誰にも気づかれない。
この映画で、あなたは<生命誕生の物語>を目の当たりにする――。引用:https://www.kaijunokodomo.com/
ちなみに「海獣の子供」の原作は、『月刊 IKKI』にて連載されていた漫画で、2006年2月~2011年11月まで連載されていました。
この原作に、10代の頃から「海獣の子供」の原作に惚れ込んでいたという米津玄師さん。それだけに、思い入れのある作品なんですね。
【米津玄師さんコメント↓】
原作を初めて読んだのは10代の頃だと思うのですが、そのすごさに圧倒されたことを憶えています。
今読み返してもあの時の衝撃は全く古びず、更に新しい発見をもたらしてくれます。
もし映像化されるのであれば歌を作らせてほしいなあなんていうふうに思ってたことが、今日になって実現するというのはなんとも感慨深いです。
原作が持ってるものに負けないよう、それでいてうまく寄り添えるようなものが、果たして自分に作れるのかと、ここ数ヶ月は問答の日々でした。今は映画館で流れる日を楽しみにしています。
引用:https://reissuerecords.net/special/uminoyuurei/
音楽を手掛けるのは、なんとアニメ映画音楽界の巨匠「久石 譲」。
長編アニメーション映画を担当するのは2013年公開のスタジオジブリ制作『かぐや姫の物語』以来なんだそうです。
米津玄師「海の幽霊」歌詞の意味を解釈!
ここからは「海の幽霊」の歌詞について解釈&考察をしていきたいと思います。
今回の楽曲は、あくまで「海獣の子供」の主題歌として米津玄師さんが書き下ろしたものなので、歌詞は原作のストーリーに沿っています。
私も実際に原作を読みましたが、なかなかここで全てを詳細に表現できるものではないかもしれません。
なので、断片的にシーン解説という感じになりますが、一部で「海獣の子供」のネタバレを含む場合があります。
原作をまだ読んでいないという方は、ご注意ください。
【初めに・・。】
この曲は、「海獣の子供」の主人公である少女、瑠花(るか)の追憶であるということを前提に解説していきます。
「海の幽霊」Aメロ・歌詞の意味
開け放たれたこの部屋には
誰もいない
潮風の匂い染み付いた
椅子がひとつ引用:「海の幽霊」作詞/米津玄師
最初のAメロ部分は、原作中のある会話シーンがもとになっています。
ジュゴンに育てられた不思議な少年、海(うみ)は 「ある言い伝え」を瑠花に教え、それを試してみよう。と言います。
海:「幽霊は椅子に座りたがっているんだって..。」
どこかの島では、先祖の霊が帰ってくる日に椅子を置き、先祖たちは、帰ってきた証拠にその椅子に何かを置いていくという..。
それとはまた別の国では、、、。
海:「部屋に幽霊がいるかどうか、確かめるのに椅子を使うって..。」
誰もいない部屋の真ん中に椅子を置いて、部屋を閉めきる...。次に見たときに、椅子に変化があったら、そこには幽霊がいるという..。
この方法は、人間と幽霊をつなぐ一つの方法なのです。
このことが元になり、次の歌詞に繋がります。
「海の幽霊」Bメロ・歌詞の意味
あなたが迷わないように
開けておくよ
軋(きし)む戸をたたいて
何から話せばいいのか
わからなくなるかな引用:「海の幽霊」作詞/米津玄師
ここでは、誰かを待っているような歌詞です。
少しでも”あなた”が迷わずにここへ戻って来れるように、この部屋の戸は開けておくと..。
きっと、光になって消えてしまった、空(ソラ)のことを言っているのでしょう。そして、時間の経過を感じさせる歌詞でもあります。
あの日から、いくつかの時がすぎ、「あなたに話したいことがたくさんありすぎて...」何から話していいのかわからない。
このBメロの時点でも、”あなた”に対しての想いの強さが現れていますが、サビでその思いはさらに強く表現されます。
「海の幽霊」サビ・歌詞の意味
星が降る夜に あなたに逢えた
あの夜を忘れはしない
大切なことは 言葉にならない
夏の日に起きたすべて思いがけず 光るのは
海の幽霊引用:「海の幽霊」作詞/米津玄師
音の浮遊感の中に、何か大きな生命の存在を感じさせる歌詞と音楽・・。サビに入った瞬間、まるで大海に飲み込まれるような壮大さを感じます。
星が降る夜に出会った不思議な少年。
”彼ら”との出会いが彼女に何を残したのでしょうか。
ちなみに、ここでいう”星が降る夜”というのは、夜空の星空だけではなく、まるで「星空を漂っているような感覚..」のことを表現していて、原作ではいくつかのシーンでそれが描かれています。。
➊原作の冒頭で、夜の珊瑚礁で漂う、サンゴの産卵を「まるで星空を漂っているよな...」と表現するシーン。
➋ジンベイザメの群れの中に飛び込むシーンで、ジンベイザメの模様を「まるで星空の中に...」と表現するシーン・・。(MVでは2:38あたりの)
➌水族館から消えた魚たちにも、まるで星のような模様を持つ....。というシーン。
「海獣の子供」の中で神秘的な体験をするとき「まるで星空のよう・・」というのはひとつのキーポイントになっているようです。
星空のように見える たくさんの光は、一体何を意味するのか...?(※ここではこれ以上は解説しません。原作を読むともっと理解できると思います。)
そして、「本当に伝えたい感情や想いというのは言葉にならない...」ということ。
この曲の歌詞の中で最も神秘的で、深い表現ですよね。
原作で、「鯨の歌には言葉だけでなく情景や感情も伝える能力がある」と言っていましたが、この曲ではそんな”言葉にならない想い”を米津玄師さんは音で伝えている気がします。
そして、サビ最後の「思いがけず光るのは・・・」の部分。この感情はどうやって言葉にしていいか解りませんが...。
懐かしいような、切ないような、夏の季節らしい独特の感情がそこにはあります。夏の憂鬱とでも言いましょうか・・
夏の終わりって、独特の寂しさと虚しさが残りますが、波の音はそれを象徴する”音”のようにも感じます。
「海の幽霊」2番Aメロ・歌詞の意味
うだる夏の夕に
梢が船を見送る
いくつかの歌を囁く
花を散らして引用:「海の幽霊」作詞/米津玄師
うだる夏とは、ゆだるとも言って「茹だる」と書きますが、まさに字のごとく体がぐったりするほどの暑さのこと。
梢(こずえ)というのは、木の幹や先端の方を表現した言葉。
夏の木々は青々と茂って、鮮やかな緑ですね。
それが潮風に吹かれて、船を見送っているように表現されているシーンなのかもしれません。
ちなみに、MV中にも出てきますが、やはりヒマワリは夏を代表する花ですよね。
ひまわりは常に太陽に向かって咲きますから、夕焼け時、海に沈む太陽を向くヒマワリが船を見送っているように見えたのかもしれません。
風が吹くと、そしてそれらが擦れあって音を出し、それを歌のように表しています。
「海の幽霊」2番Bメロ・歌詞の意味
あなたがどこかで
笑う声が聞こえる
熱い頬の手触り
ねじれた道を進んだら
その瞼が開く引用:「海の幽霊」作詞/米津玄師
ここでも、回想している歌詞になります。
鮮明に残った思い出や記憶というのは、まるでそこに存在しているかのように感じさせる時がります。
だから、”あなた”の笑い声も瑠花の耳に届いているのかもしれません。
そしてもう一つ鮮明に残った体温の想い出。
原作でも出てきますが、ジュゴンに育てられた少年、海(ウミ)と空(ソラ)は常に水で体を濡らさないと、火傷したように皮膚が熱くなってしまいます。
そんな彼の頬に触れた思い出。それを思い出している部分かもしれません。
ここでは、音と温度という二つの感覚で、思い出を表現していますね。
そして、ねじれた道とは、海中の流れを表現していると思います。
MVでは2:58のシーンで海の生き物たちがが渦巻いて作った海の流れの先に、少年がいて、吸い込まれそうなほどの瞳でこちらを見ています。
同時に、開く「瞼(まぶた)」には不思議な世界への入口という比喩も含まれているようです。
そして、この後、間奏にはいり、ラスサビへ行くのですが、ぜひ注目して欲しい部分があります。
それは、鯨の鳴き声にも似た音が含まれている部分です
ちなみに、実際の鯨の鳴き声がこちら↓
神秘的で、癒されますよね。
この動画のようにはっきりと聴き取れる音ではありませんが、それをイメージした音が含まれていて、まるで深海に潜っているような感覚にさせてくれます。
そして、そんな癒しから、また壮大なサビへと波が押し寄せるように一瞬にして包み込みます。
「海の幽霊」ラスサビ(2番)・歌詞の意味
離れ離れでもときめくもの
叫ぼう「今は幸せ」と
大切なことは言葉にならない
跳ねる光に溶かして引用:「海の幽霊」作詞/米津玄師
たとえ、物理的に離れていても、心はそこにあるという部分。形として存在していなくても、未だにあの時の体験は心を高揚させるのでしょう。
だけど、あの時よりも「今は幸せ」胸を張ってと言える。
ここでは、”あなた”を安心させたいという意味も込められている気がします。
また、1番では「夏の日に起きたすべて..」という、言葉に出来ない奇跡のような体験を表現していました。
ですが、2番では 「跳ねる光に溶かして」と、言葉にならない想いを伝える手段として、表現している歌詞です。
命の光に、想いを溶かす...という何とも幻想的な表現ですよね。
風薫る 砂浜で
また会いましょう引用:「海の幽霊」作詞/米津玄師
最後のこの言葉が「かけがえのない大切な思い出」を強調させる部分ですね。
そして、主人公である瑠花(るか)の心情の変化も感じられるシーンです。
懐かしんでいるけども、決して後ろ向きではない、ポジティブな感情がそこにあります。
それと同時に「二度と会えることはない」と解っているからこその、「また会いましょう。」なのですよね。
米津玄師「海の幽霊」歌詞の意味を解釈! まとめ
いかがでしたか?
毎回そうですが、米津玄師さんは、考えさせる音楽を創作しますね。
とても深い歌詞と感情を揺さぶる音楽で、聴き手の過去の記憶や感情に語りかけてきます。
曲だけでも、ものすごく感動しますが、原作に触れ、さらに映画を見ることで、その感性は何倍にも広がると思いますので、ぜひ原作と併せて曲に触れてみてください。
※何だか映画の宣伝のようになりましたが・・(笑)
以上、米津玄師「海の幽霊」の歌詞を解釈&考察でした。
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