今回は 米津玄師さんの人気曲「Lemon」の歌詞の意味について考察してみたいと思います。
ドラマ「アンナチュラル」の主題歌として書き下ろされ、2018年最大の大ヒットとなったこの曲ですが、この歌詞にはどんな意味が込められているのでしょうか?
また、MVで米津玄師さんが履くハイヒールの謎についても迫って見たいと思います。
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米津玄師「Lemon」はどんな曲?。
[open title='「Lemon」歌詞はここをクリック'][/open]夢ならばどれほど
よかったでしょう
未だにあなたのことを夢にみる
忘れた物を取りに帰るように
古びた思い出の埃を払う戻らない幸せがあることを
最後にあなたが教えてくれた
言えずに隠してた昏い過去も
あなたがいなきゃ
永遠に昏いままきっともうこれ以上
傷つくことなど
ありはしないとわかっているあの日の悲しみさえ
あの日の苦しみさえ
そのすべてを愛してた
あなたとともに
胸に残り離れない
苦いレモンの匂い
雨が降り止むまでは帰れない
今でもあなたはわたしの光暗闇であなたの背をなぞった
その輪郭を鮮明に覚えている
受け止めきれないものと
出会うたび
溢れてやまないのは涙だけ何をしていたの
何を見ていたの
わたしの知らない横顔でどこかであなたが今
たしと同じ様な
涙にくれ 淋しさの中にいるなら
わたしのことなどどうか
忘れてください
そんなことを心から願うほどに
今でもあなたはわたしの光自分が思うより
恋をしていたあなたに
あれから思うように
息ができない
あんなに側にいたのに
まるで嘘みたい
とても忘れられない
それだけが確かあの日の悲しみさえ
あの日の苦しみさえ
そのすべてを愛してた
あなたとともに
胸に残り離れない
苦いレモンの匂い
雨が降り止むまでは帰れない
切り分けた果実の片方の様に
今でもあなたはわたしの光引用:「Lemon」作詞作曲/米津玄師
ドラマ「アンナチュラル」の主題歌として書き下ろされたこの曲は、”人の死”をテーマに歌った曲。
曲そのものは、一貫して「あなたがこの世から消えてしまって悲しい・・。」という思いを歌ったものなのですが、米津玄師さんなりの「人の死」への想いが込められているようです。
とにかく悲しい、寂しいという思いを歌っているのですが、ただそれだけではない、いろいろな感情を呼び起こさせる歌詞になっています。
ハイヒールを履いているのは何故?
https://twitter.com/hachi_08/status/972131447824773121
このMVの中で、米津玄師さんは何故かハイヒールを履いています。悲しげな表情を浮かべる米津玄師さんと、その雰囲気に似つかわしくないハイヒール。
一見すると、なんとも理解出来ない行動・・。
ですが、米津玄師さんは、このハイヒールで、他人には理解されない「2人を繋ぐ何か」として表現したかったそうです。
詳しくは、『米津玄師・・・・・・とLemon。』で本人がコメントしていますのでそちらをご参考に
⇒19:11あたりです
よく晴れた日、隣人の葬儀に集まった人混みの中、あなたはひとり指笛を吹いていた。周りの視線も気にせずに、ただひとり、深く青い空がいっぱいになるまで指笛を吹き続けていた。他の誰にもわからない音楽を、もっと大事にすべきだとぼくは思った。
— 米津玄師 ハチ (@hachi_08) November 6, 2016
米津玄師さんがある日見た”夢”が元になって、あのハイヒールのシーンが生まれた訳なんですね。
となると、女性の形見と言うわけではなく、思い出に近いのかもしれません。
米津玄師「Lemon」歌詞の意味は?
米津玄師さんの死に対する思いが詰まった楽曲で「Lemon」ですが、この歌詞には一体どんな意味が込められているのでしょうか?
ドラマへの書き下ろし楽曲でもあるので「アンナチュラル」のシーンと重ね合わせて考察していきたいと思います。
「Lemon」Aメロ①(前半) 歌詞の意味は?
夢ならばどれほどよかったでしょう
未だにあなたのことを夢にみる
忘れた物を取りに帰るように
古びた思い出の埃を払う(出典:「Lemon」作詞/米津玄師)
はっとして起きたとき、「あぁ 夢で良かった・・。」と思うことはよくあります。
しかし、これは夢ではなく現実。
あなたがこの世にいないという、悲しい現実が「夢」だったらよかったのにと、嘆いている状態です。
「思い出」に埃がかかるほど、時が経っているのに、未だにあなたの夢を見る・・。
今でも「あなた」の死を受け入れられていないほど、悲しんでいるようですね。
「Lemon」Aメロ②(後半) 歌詞の意味は?
戻らない幸せがあることを
最後にあなたが教えてくれた
言えずに隠してた昏い過去も
あなたがいなきゃ永遠に昏いまま(出典:「Lemon」作詞/米津玄師)
今の状態が、「不幸」という表現ではなく、「幸せ」を失ったという
失望感を表している歌詞です。
「昏い(くらい)」は、「暗い」と比べると、感情や道理的なニュアンスがありますので、
ここではネガティブな過去という表現になるかもしれません。
しかし「昏い」には、霞んでぼやけた状態でくらい。という意味もありますので、どちらとも受け取れるかもしれませんね。
私の昏い過去も、いつかあなたに打ち明けられると思っていたのに、あなたはもういない。
取り戻すことのできない「幸せ」は、過去だけでなく、未来さえも昏くしていくことでしょう。
「Lemon」 Bメロ① 歌詞の意味は?
きっともうこれ以上
傷つくことなど
ありはしないとわかっている(出典:「Lemon」作詞/米津玄師)
これまでも これからも、この悲しみが一番大きいということ。
深く傷ついた心は、癒えることは無いかもしれません。
最も深い悲しみということですね。
「わたし」にとっての「あなた」の存在がどれだけ大切だったか・・それが伝わってくる歌詞です。
「Lemon」サビ① 歌詞の意味は?
あの日の悲しみさえ
あの日の苦しみさえ
そのすべてを愛してた
あなたとともに
胸に残り離れない
苦いレモンの匂い
雨が降り止むまでは帰れない
今でもあなたはわたしの光(出典:「Lemon」作詞/米津玄師)
今までは、感情を押し殺すように、一歩引いた表現をしていましたが、サビでついに「悲しい感情」が溢れます。
「あの日」とは、失ったその日、その瞬間を表しているのかもしれません。
今までの「幸せ」な思い出はもちろん、「悲しみ・苦しみ」という今の現実さえも、すべてひっくるめて愛している。
「あなた」への想いの強さが解るサビです。
「レモンの匂い」は、「あなたの匂い」を比喩した形で表現しています。
思い出には、視覚や感触だけでなく「匂い」も大きな記憶として残ります。
そして、ここでは2つの解釈をしました。
[box class="glay_box" title="" type="simple"]- そのまま「あなた」の匂いをレモンに例えた?
- 「苦いレモンの匂い」は 遺体の匂い?
「あなた」の匂いをレモンに例えた?
「あなた」の匂いをレモンに例え、ひとつの記憶として存在している
という解釈をした場合。
「あなた」と「わたし」が、気持ちも 距離感も 親密な関係であったことが解ります。
「匂い」を感じられる距離感にいる、存在だったということですね。
「苦いレモンの匂い」は、遺体の匂い?
この「苦い」という表現がどうしても引っかかったので、もしかしたら?
と思って、そう解釈してみました。
ドラマ「アンナチュラル」では、中堂さんが、恋人の遺体を前に、言葉を失っているシーンがよく出てきます。
胸に残り離れない記憶は、目の前にした恋人の遺体で、「苦いレモンの匂い」と比喩したのは、遺体の匂いだったのかもしれません。
死後、どれくらいの時間が経っているかにも寄りますが、そう簡単に取れるようなにおいでは無いですからね。
「強い匂い」も、記憶として残り続けているのかもしれません。
そうやって解釈すると、「雨が降り止むまでは帰れない」という、言葉が理解できます。
事件が解決するまで。
そう簡単には戻れない・・という「決心」としても感じ取ることができます。
2つのパターンで解釈してみましたが、どちらとも感じ取れる表現ですね。
そしてそれは、なぜ「レモン」なのでしょうか?
米津玄師「Lemon」Aメロ② 歌詞の意味は?
暗闇であなたの背をなぞった
その輪郭を鮮明に覚えている
受け止めきれないものと出会うたび
溢れてやまないのは涙だけ(出典:「Lemon」作詞/米津玄師)
暗闇は、心の状態を表している気がします。
最後になぞった輪郭は、もう亡くなってしまった「あなた」の亡き骸かもしれません。
その後もたびたび実感する、あなたが無くなってしまったという事実。
その瞬間と出会うたびに、涙があふれてやまないのかもしれませんね。
この歌詞の部分は、特にドラマ「アンナチュラル」のシーンと重なる気がします。
恋人の遺体を、顔色一つ変えずに解剖しなければならなかった、中堂さんの気持ち。
想像もできないほどの 苦しみだったと思います。
「Lemon」 Bメロ② 歌詞の意味は?
何をしていたの 何を見ていたの
わたしの知らない横顔で(出典:「Lemon」作詞/米津玄師)
ここも、ドラマ「アンナチュラル」のシーンと重なる部分ですね。
中堂さんの恋人は、目を開けたまま亡くなっていました。
その開いたままの眼は、いったい何を見ていたのでしょうか?
変わり果てたその姿を、私が今まで見たことのない、横顔と表現したのかも。
「Lemon」 サビ② 歌詞の意味は?
どこかであなたが今
わたしと同じ様な
涙にくれ 淋しさの中にいるなら
わたしのことなどどうか
忘れてください
そんなことを心から願うほどに
今でもあなたはわたしの光(出典:「Lemon」作詞/米津玄師)
嘆き悲しむ絶望の中で「あなた」への優しさが表れている歌詞ですね。
「わたし」と同じ悲しみを「あなた」には背負ってほしくないという気持ちです。
しかし、「あなた」は亡くなってしまった存在。
この世に形はなく、悲しむことも無いかもしれない。
でも、もし・・死後の世界で存在していたとしたら。
そして、私と同じような悲しみを感じているとしたら・・。
私のことなんて忘れてほしいと、心から願っている。
この部分は、本当に切ない歌詞ですね。
「Lemon」Cメロ 歌詞の意味は?
自分が思うより
恋をしていたあなたに
あれから思うように
息ができないあんなに側にいたのに
まるで嘘みたい
とても忘れられない
それだけが確か(出典:「Lemon」作詞/米津玄師)
自分で理解しているよりも、ずっと強く愛していたという事に、
亡くしてから気づいたのかもしれません。
思い出すほどに美化する記憶と、そばにいた感触が、消えない悲しみとして残ります。
そして、ラストのサビへ。
「Lemon」サビ(ラスト) 歌詞の意味は?
あの日の悲しみさえ
あの日の苦しみさえ
そのすべてを愛してた
あなたとともに
胸に残り離れない
苦いレモンの匂い
雨が降り止むまでは帰れない切り分けた果実の片方の様に
今でもあなたはわたしの光(出典:「Lemon」作詞/米津玄師)
死を受け入れた時の「悲しみ」も「苦しみ」も、すべてを『あなたの思い出』として、ともに愛し続けているということ。
※そして、「雨」が降り止み、全てが解決するまでは、帰らないという決心。
(↑①番のサビ歌詞考察)
この2つをもう一度歌っています。
そして、最後の歌詞「切り分けた果実の片方の様に」という部分。
これは、スペインのことわざ「オレンジの片割れ」からきています。
元々はひとつのものが2つに割れ、片割れに一致するのは、もうひとつの片方しかない。
相手が魂のパートナーであり、生涯愛する人という意味が込められています。
このように愛し合う2人を果物で例えることは多いのですが、ここでは、匂いの強い「レモン」に例えているんですね。
そして、その片割れである、「あなた」だけが、「わたし」の昏い過去と未来を、照らすことができるのかもしれません。
この先の「わたし」の未来が明るいものではなかったとしても、それを照らす「光」として
「あなた」は心の中で存在し続けることでしょう。