カーターの指示に従ってワシントン・ポストの世界観を完成させたのは、小道具担当のダイアナ・バートンだ。バートンは自らワシントンD.C.に赴き実物のペンタゴン・ペーパーズのコピーを確認するなど、実際の遺物へのアクセスのために奔走した。「ペンタゴン・ペーパーズもこの作品の主役だから、本物にできるだけ近いものを入手する必要があった。国立公文書館に行って実際の文書に触れることで、印刷に使われた紙の種類などを確認することができた。そうして全44巻、7,000ページの本物に近い文書を再現することができたの」とバートンは説明する。

その他、バートンが用意した小道具で特に目を引くのが、ダニエル・エルズバーグが文書のコピーに使用したコピー機である。「実際に使用されたコピー機はゼロックス914だったことを3つのソースで確認したけど、実物を見つけるのは簡単ではなかった」とバートンは振り返る。「でも、ニューヨーク州ロチェスターのゼロックス博物館に1台保存されていることが分かったの。博物館から借りることはできたけど、コンセントにつなぐと発火すると警告された。だから、電源を入れない状態でコピー機が作動しているように見せる必要があったけど、実物を借りられたのは大きな収穫だった」

カーターのデザインとバートンの小道具を見た当時のワシントン・ポスト関係者は、まさにタイムスリップしたような感覚を味わったようだ。「初めて現場に足を踏み入れた時、幽体離脱を経験した気分だった」とベテラン記者のスティーヴ・コルは語る。「1970年代の記者に扮したエキストラたち、黒電話、煙が立ちこめるタバコなど、全てがリアルだった。現実に忠実であろうとする製作陣の心意気に感心したよ」

また、チームは1971年頃のニューヨーク・タイムズのオフィスも手がけた。カーターのチームはニューヨークのエクスチェンジ・プレイスにあるゼネラル・ソサエティー・オブ・メカニックス・アンド・トレイズメンのオフィスビルを使用し、当時のタイムズ社の外観や、エイブ・ローゼンタールがペンタゴン・ペーパーズの記事を編集した編集室を再現した。カーターはゼネラル・ソサエティーの入り口に設置された見事な地球儀に驚いたという。「地球はニューヨーク・タイムズの図像の一部だ。それが光を発している様子は、報道のあるべき姿を表現した完璧なメタファーだった」

外観にさらに5つの地球儀を設置し、ニューヨーク・タイムズの活字ロゴを曇りガラスに加え、同社の飾り額を外装壁に加えたことで、古いビルが同社のオフィスとして見事に生まれ変わった。その再現ぶりは目を見張るもので、ニューヨーク・タイムズがこのセットについて記事を掲載するほどだった。