カーターはデザインを手がける上で明確な目標があったという。「俳優たちが瞬時に1971年の編集室にタイムスリップできるようなセットを作りたかった。スティーヴンとの仕事で心がけているのは、彼がどこを見てもその物語の時代と世界に完全に身を置けるようなセットをデザインすることだ」

最初の課題は本作にあった撮影場所を見つけることだったが、カーターはニューヨーク州ホワイト・プレインズに高級マンションへのリノベーションを控えた空きオフィスビルを見つけることができた。幸運なことに、工事の直前にビルの内部で本作の準備をすることができたのだ。「必要なディテールを全て反映できる場所を確保できた」とカーターは言う。

カーターにとって、それぞれのキャラクターの個室は必要不可欠な要素だった。本作の中心となる場所は、透明ガラスで囲まれたブラッドリーの部屋である。「ベンは外の様子が見える透明の部屋で仕事をしていた」とカーターは指摘する。「まるで船長のように、部下の様子をそこから見渡していたんだ。編集室の全員に目が配れる環境をトムはうまく演技に生かしていたし、ヤヌスのクリエイティブな撮影方法はブラッドリーの部屋を私的なものにしつつ、周りで起こっていることを把握できるような環境としても映し出していた」

俳優がブラッドリーとグラハムの人格を演技によって構築していくのと同様に、2人のオフィスも作り上げられていった。「ベンの解放的なオフィスとは違い、キャサリンのオフィスはアクセスしづらい重役室にあった。ニュース番組「60 Minutes」の関係資料や写真を見つけたんだ。ベンとキャサリンは正反対の人間だったが、私にとって重要だったのは、そんな2人がいかにお互いを補っていたかという点だ。単独では無理だが一緒ならできることがあると2人は分かっていたからね」とカーターは続ける。

ヴィンテージのタイプライターの愛好家であるハンクスにとって、本作に登場するミッドセンチュリーのタイプライターは特にワクワクする小道具だった。「タイプの音が最高なんだ。現在の編集室とはまるで違う。タイプライターを打つ音がする環境で撮影することで、当時の編集室の特性を感じることができた」とハンクスは語る。セットの編集室があまりにリアルだったため、ハンクスは実際にそこで生活しているような状況に陥ったようだ。「ベン・ブラッドリーがしたように、私もソファで昼寝をしたんだ」とハンクスは白状する。「リック・カーターはリアルなセットを生み出す天才だよ」