「オフィスや夕食会のシーンは説得力があって、次に何が起きるのか早く見たいと思わせる力がある。ヤヌスとスティーヴンは常に一緒に作業をしていたわ。2人の視点はまるで一対の目のようだった」とストリープも続ける。

この作品の主な舞台となるワシントン・ポストのオフィスの再現は、2度のオスカーを誇るプロダクション・デザイナー、リック・カーターの手に委ねられた。彼の手腕により、キャストとスタッフは当時にタイムスリップする形となった。「彼が生み出したセットのリアル感は驚異的だった」とパスカルは振り返る。「たばこの吸い殻までが、まるで1971年の物のように見えた。でも、決して大げさではないの。昔を題材とした映画では、物語よりディテールが目立ってしまうこともあるけど、リックのセットはあくまでストーリーを盛り上げるためだった」

プロダクションの細部にまで徹底的にこだわるスピルバーグにとって、当時を知る者の反応を見ることは貴重な体験だったようだ。「今もワシントン・ポストに勤めている友人のリチャード・コーエンをセットに招待した。編集室に足を踏み入れ、あちこち見て回った彼の目には涙があふれていたよ。彼は『当時のオフィスそのものだ』と言ってくれた」

カーターは現代とはまるで異なる当時の新聞社の様子を詳細まで調べ上げた。社内にコンピューターは存在せず、代わりにタイプライターやコード電話機が並んでいた時代である。映画ファンなら『大統領の陰謀』(76)に登場したワシントン・ポストの社内を覚えているだろうが、実際のところ、1971年当時にはオフィスは全く違うビル内に存在し、内装も異なっていたことがカーターの調査で分かった。今も保管されている当時の写真を見つけたのだ。

「10枚ほど写真を見つけたが、全内装が写っている写真はなかった。だから他の写真から受けた印象に基づいて作り上げた部分もある。1つ分かったのは、当時のワシントン・ポストの編集室は非常に広くて透明ガラスに囲まれた部屋だったことだ」とカーターは説明する。「机やタイプライター、ローロデックス(卓上回転式の名刺整理文具)、電話、記事のカーボンコピー、灰皿などが乱雑に置かれた完全にオープンな場所だったんだ。その様子は1つの時代の終わりと新たな時代の幕開けの象徴のようで、ある意味この作品のテーマと合致していた」