本作におけるダイナミズムは、キャラクター間のあふれるような緊張感によるものだけではない。ストーリー展開のペースや、それぞれの言い分を語る1970年代の陰の実力者と新聞記者の世界観に対する詳細な映像表現によって作り出されたものでもある。スピルバーグは本作のために一流のスタッフから成る製作チームを結成。その多くは、何十年にもわたってスピルバーグとコラボレートしている。中でもチームにとって不可欠だったのは、スピルバーグが長年信頼を置いている撮影監督のヤヌス・カミンスキーである(『シンドラーのリスト』(93)と『プライベート・ライアン』(98)で2度アカデミー賞®を受賞)。

「ヤヌスは光でキャンバスを描く画家のよう。彼とスティーヴンのコラボレーションは最高だった」とパスカルは振り返る。「キャサリンが男性陣に囲まれている様子を見せることで、彼は彼女がこの業界で唯一の女性であった点を強調しているの。その点は全てのシーンでビジュアル的に表現されているわ」

また、スピルバーグとカミンスキーは歴史の反映という点にもフォーカスしている。「これはアメリカの歴史を振り返る映画でもある」とクリーガーは言う。「ヤヌスとスティーヴンはその点を強調しているの。例えば、編集室の天井や電話ボックスまでもが当時の時代を忠実に反映し、ストーリーを語る上での重要な要素の一部になっている」

スピルバーグとカミンスキーは、本作を35ミリフィルムで撮影することを決めた。それは1970年代の映画製作への回顧だけではなく、あらゆるディテールをより豊かに表現するために必要なことだった。「ヤヌスと私は、現代映画ではなく1970年代前半に撮影されたような作品を作りたかった」とスピルバーグは説明する。「当時に合った色温度や色彩パレット、そしてヤヌスのライティングとアン・ロスによる素晴らしい衣装の調和が重要だった」

また、スピルバーグはSF大作の製作の後に、キャラクター重視のドラマ作品における撮影の自由を享受したようだ。本作のように複雑にストーリーが展開する作品では、撮影面での選択肢が増えるからである。「カメラを設置する場所は成り行きで決められたから、非常に楽しかった。それが可能な現場では、自由に撮影方法を変えるのが好きなんだ」とスピルバーグは言う。