「ライバルだけでなく、友人からも能力を疑われていた彼女にとって、自身の立場を明確にするのはとても難しいことだったはず。そういった環境の中で立場を公言するのは本当に孤独だったと思うわ。この作品に出てくる全員が同じ行動を取っているし、リスクを冒している。これは、一般の人々がいかに変化をもたらし、歴史を変えたかについての物語だと私は思っている。大きな変化は1人の人間の勇気から始まるの」とストリープは続ける。

堂々とした風貌で知られるグラハムの外見を具現化することは、彼女の内面を演じる上でも重要な要素だった。「私にとっては、キャサリンの外見を完全にまねすることよりも、彼女の上品な雰囲気と勇気ある決断の背景にあったためらいの感情を捉えることの方が重要だった。とても興味深い挑戦だったわ」とストリープは語る。

現場にいた周囲の者にとっては、脳裏に焼きついて離れないような見事な変身ぶりだったようだ。クリスティ・マコスコ・クリーガーは次のように語る。「メリルは役作りに非常に献身的で、当時のキャサリンを知る人たちに可能な限り話を聞いていた。監督とも話し合いを重ねていたし、(脚本の)ジョシュやリズにも何度も意見を求めていた。メリルが消えてキャサリン・グラハムが現れるまで、それを繰り返していたわ。彼女のヘアとメイクのテストをした時、そこにはパワースーツを着たキャサリン・グラハムがいた。本当に驚いたわ。メリルはキャサリンのまねをしたんじゃない。彼女の魂を完全に捉えたの」

また、ストリープにとって興味深かったもう1つの要素は、グラハムとブラッドリーの絆の深さだった。全てが崩壊するように思えた時、ブラッドリーが彼女の支えとなったのだ。「2人の関係がピュアな友情である点を気に入っているの。最近の映画では珍しいことよ。男女が仕事仲間として友情を築いている作品はほとんどない」とストリープは言う。「キャサリンはベンを敬愛していたと思う。そこに恋愛感情はないけど、彼のことを自分の一部のように感じていたのだと思うわ」

共通の目的のもとに築かれた2人の親密な関係は、ハンクスとの共演の中でも共鳴する要素だった。メリルにとって、ハンクスは驚くべき存在だったようだ。「トムがハリウッドきってのナイスガイとして知られていることは有名よ。そして、実際にすごくいい人なの。でもそれだけでなく、ずば抜けて頭がいい人でもある。そこがトムとベンの共通点だと思うわ。2人ともウィットに富んでいて、常に周囲の人たちの数歩先を行っている。周りの人間に「もっと、もっと」と要求するベンの性格は、トムにも共通する部分だと思う」とストリープは語る。