本作ではペンタゴン・ペーパーズの掲載を巡る戦いにおける緊張感であふれているが、1人1人よりも団結した時の方がより力を発揮できるというパートナーシップについても丁寧に描かれている。ストーリーの中心にあるのは、性格が全く異なりながらも、お互いに刺激し合うことで最大の力を引き出していくキャサリン・グラハムとベン・ブラッドリーの存在だ。本作で製作陣はストリープとハンクスという最強のコンビを誕生させ、2人の化学反応は素晴らしいものとなった。「トムとメリルが編集室のセットに入ってきた時、皆が驚きで口をぽかーんと開けてしまったわ。2人はグラハムとブラッドリーそのものだった」とエイミー・パスカルは撮影を振り返る。「2人とも役に完全に成りきる俳優だし、とにかく驚異的だったの」

グラハムはワシントン・ポストのトップに就任することで予期せず「ガラスの天井」を打ち破り、その後勇敢な報道機関における女性第一人者になることを決意した、アメリカで最も影響力のある女性の1人となった。しかし、ペンタゴン・ペーパーズの事件当時は、彼女はまだ足固めをしている段階で、唯一の女性経営者として会社をどのように率いていくのかを学んでいる最中だった。

キャサリンの父で投資家のユージン・メイヤーが1933年にワシントン・ポストを買収し、それ以降同紙はグラハム一家が所有していた。1946年、キャサリンの夫であるフィル・グラハムがメイヤーの跡を継いで発行人となり、調査報道を重視する方針によって同紙を地元の三流紙から全国紙へと成長させた。1963年、深刻なうつ病を患っていたフィルが自殺したことで、当時4人の子供の母親だった46歳のキャサリンが後継者となった。周囲の友人や専門家は経験豊富な人材に会社を任せるよう説得したが、彼女は子供たちや家族の遺産のために自分が経営者になることを決意した。

「メイヤーが会社をフィルに譲った時、キャサリンは大喜びした。フィルは非常に頭のいい男だったから、父親は素晴らしい決断をしたと思ったんだ。そのことは彼女の自叙伝に書いてある。キャサリンは夫を尊敬し愛していたから、彼の跡を継ぐことが正しい決断だと考えた」とスピルバーグは説明する。  ベトナム戦争に従事した経験を持ち、現在はグラハム・ホールディングス・カンパニーのCEOを務めるキャサリン・グラハムの息子のドン・グラハムは次のように語る。「母は自分の父親と夫のことを考え、新聞社を経営することに決めた。2人が非常に大事にしていた会社だったからだ」  キャサリン・グラハム自身も次のように記している。「時には決断することなしにただ前に進むことがある。私はまさにそうした—何も考えず、やみくもに新しい未知の人生へと足を踏み入れていった」