「ジョシュとリズの両方に脚本を担当してもらえて幸運だった。2人のコラボレーションはこの上なく素晴らしかった」とパスカルも付け加える。 「リズの脚本は2人の人間の私的で親密な旅を描いていた。見事な出来だったよ」とシンガーは言う。「それから、グラハムが決断するまでの数日がいかに濃密だったかを表現し、観客を当時の世界へと深く誘うべく、歴史的な要素と時代背景を加えていった。さらにウォーターゲート事件に関するニクソンの録音テープや、ニューヨーク・タイムズの当時の状況も掘り下げることで、グラハムの歴史的決断の背景を肉付けすることができた」

シンガーはグラハムとブラッドリーの関係を常にストーリーの中心に据えた。「2人の進化がこの作品の核だけど、リズはその点を誠実に正直に描いていた」とシンガーは続ける。「ある意味、2人の絆には結婚したての若い夫婦のようなところがある。ブラッドリーとグラハムは5年間一緒に仕事をしているけど、それまで深刻な困難に直面したことがなかった。ペンタゴン・ペーパーズによって今回初めて大きな試練を迎え、2人はお互いをギリギリのところまで追いつめるんだ。関係が壊れてしまうのではないかというところまでね。でも実際は2人の絆は一層強くなる。そこがこのシーンの美しい点だ」

また、ペンタゴン・ペーパーズの公表を決め、ウォーターゲート事件についても果敢に報道した(この点がアラン・J・パクラ監督の『大統領の陰謀』(76)に描かれている)ワシントン・ポストの実際の行動を脚本に反映することがシンガーにとって重要だった。「ある意味、これはウォーターゲート事件の発端となる物語だ」とシンガーは説明する。「グラハムやブラッドリーたちがいなければ、ウォーターゲート事件に関する報道は起こらなかったかもしれない。ペンタゴン・ペーパーズが新聞社の在り方を変えたとも言える」  本作の脚本は、シンガーにとってジャーナリズムの異なる一面を目撃する絶好の機会となったようだ。この作品で描かれているのは、世間の注目を集めるようなスクープを追うだけでなく、権力者が知られたくないような事実を追求する勇敢さである。本作はワシントン・ポストが新しい事実を報道したという話ではない。そのため、ペンタゴン・ペーパーズをスクープしたのはニューヨーク・タイムズだったという点をあえて明確にしている。

「このストーリーを先導しているのはニューヨーク・タイムズよ」とパスカルは言う。「だから、この映画はブラッドリーがまたしてもニューヨーク・タイムズにスクープを奪われ、苛立ちをあらわにしているシーンから始まる。彼は本当に競争心が激しい人間だから、ニューヨーク・タイムズが特ダネをつかんだことが許せない。でも興味深いのは、最初はスクープをつかめなかったことしか頭になかった彼が、事実の全容をいかに世間に伝えるかという点にフォーカスするようになることなの。それをきっかけに、ブラッドリー、グラハム、ワシントン・ポストはこれまでとは違う目的を抱くようになる」