スピルバーグと20年以上タッグを組んでいる製作のクリスティ・マコスコ・クリーガーもこう続ける。「1日で全てが大きく変更になった。スタッフを集めて『イタリアで撮影は終了。ニューヨークに移動して11週間で別の映画を作る』と告げたの」 本作の製作は通常では考えられないスピードで進んでいった。それは、製作が早いことで有名なスピルバーグにとってさえ尋常ではない早さだった。彼が主役のグラハム役とブラッドリー役として白羽の矢を立てたストリープとハンクスはすぐに作品への意欲を示し、奇跡的に2人ともスケジュールがちょうど空いていた。こうしてハリウッドを代表する才能豊かな3人のアーティストが本作で結集し、急ピッチで製作が進行していった。

特にスピルバーグの興味を引いたのはグラハムとブラッドリーがリスクを冒す点で、それによってスリリングなドラマの要素がストーリーに加えられ、女性が自分の中にある強さを見いだしていくという人物描写も加わった。「ニューヨーク・タイムズが差し止め命令を受けた直後に、ワシントン・ポストはペンタゴン・ペーパーズに関する記事の掲載という大きな賭けに出た」とスピルバーグは説明する。「最悪のタイミングにも関わらずだ。ワシントン・ポストはすでに危機的な状況にあったから、報道機関として健在だということを世間にアピールする必要があった。一連の行動の中心にいたのがグラハムで、彼女は新聞社史上最も大きな決断を迫られた。これはリーダーの誕生と新聞社の発展を描いた作品なんだ」

またスピルバーグは、『スポットライト 世紀のスクープ』(15)でアカデミー賞®最優秀脚本賞を獲得し、記者の日常を本能的に描き出す才能の持ち主として有名なジョシュ・シンガーにハンナの脚本のブラッシュアップを依頼した。「ジョシュにリズの脚本を送ったら、彼はすぐに興味を示してくれた。2人で何度も話し合いをし、グラハムとブラッドリーの回顧録を読み、作品の方向性について検討した。ジョシュは短い間に徹底的なリサーチをしてくれたよ。今までに見たことがないほど深く掘り下げられた内容だったのは、彼が法律を学び、テレビシリーズ「ザ・ホワイトハウス」の脚本を担当した経験があることが関係していると思う。彼は真実を見つけることの重要性を理解しているし、この歴史的事件についてざっと調べるだけでなく、事実関係の詳細を追求することも重要視している。徹底的に調べて掘り下げることができるんだ」とスピルバーグは語る。