グラハムとブラッドリーが直面した危機は絶大だった。死者数が増加していく中で若い男性がそれでもベトナム戦争に召集され続けたという現実、国家反逆罪に問われるのではないかという不安、ワシントン・ポストが築いてきた財産と将来、家族や社員を危険にさらしているという懸念、そして友人を裏切ることになるのではないかという不安など、多くの要素が含まれていた。

ワシントン・ポストとアメリカのジャーナリズムに刺激を与えたリスクをいとわない勇敢さが、ハンナの脚本の要となった。執筆を進めるうちに、野心にあふれ、肝のすわった1970年代の新聞社の活気のよさの中で、人々がどう選択していったかについての話となった。また、人生最大の危機に直面した、陰と陽のような発行人と編集者の間の固い絆、そして、心が通じ合った者同士のパートナーシップを描いている。「ペンタゴン・ペーパーズの公表をめぐって、グラハムとブラッドリーの信頼関係は築かれ、それが2人の強みになっていく」とハンナは語る。「同じ道を探求することになったソウルメイトたちのラブストーリーだと私は考えているの」

ハンナの脚本はすぐに業界で話題を集めた。製作のエイミー・パスカルは脚本を読んだ時のことを次のように振り返る。「世間に伝えるべき物語だと思った。この脚本で特に気に入った点は、それまで働いたことがなく誰にも相手にされなかった主婦が、歴史に残るような重大な決断を迫られたということ。その決断が彼女の人生と新聞業界を大きく変え、彼女はフォーチュン誌が選ぶトップ500企業の初の女性経営者となった。非常に興味深かったわ」

本作の脚本は、2017年にデビュー40周年を迎え、スピルバーグよりも長いキャリアを持つメリル・ストリープの目にも留まった。「アラン・J・パクラ監督の映画『大統領の陰謀』(76)を見たから、ワシントン・ポストの件とウォーターゲート事件のことは知っていたわ。映画には少しだけキャサリン・グラハムも登場したけど、彼女のことはあまり知らなかった」とストリープは言う。「リズの脚本は、当時の特色を本当によくつかんでいた。今まであまり語られることのなかった事件に関する感動的なストーリーよ」

スピルバーグもハンナの脚本に直感的に反応した。当時スピルバーグはSF大作『レディ・プレイヤー1』(18)製作の準備段階に入っていたが、本作の深みのある人間ドラマと重要な史実に大いに惹きつけられた。「脚本の前提と優れた文章、徹底的な研究、そして特にグラハムについての美しくパーソナルな描写に惹かれた。どうかしていると思われるだろうが、今すぐこの映画を作らなければならないと思ったよ。とにかく夢中になった」とスピルバーグは振り返る。