ペンタゴン・ペーパーズには多くの物語が含まれている。20年以上もの間、4つの政権がベトナム戦争についていかに国民に嘘をついてきたか、なぜ元海兵隊員で軍事コンサルタントだったダニエル・エルズバーグが内部告発することになったのか、ニューヨーク・タイムズがどのように世紀のスクープを扱ったのか、決定的な訴訟、今も続くメディアへの影響、アメリカ合衆国憲法修正第1条、そして民主主義に関する物語である。しかし、読む者を虜にするリズ・ハンナの脚本は、一連の騒動を新鮮な角度から捉え、公表に踏み切ったワシントン・ポストの決断の中心にあった人間関係や魅力的な人物を描くことに焦点を当てている。

ハンナはワシントン・ポストの伝説的な発行人であるキャサリン・グラハムの人生に興味を抱いていた。70年代初頭のグラハムは全国規模の主要報道機関を率いた初の女性であり、ペンタゴン・ペーパーズの掲載にあたってはその穏やかな性分に似合わず戦いに挑んだ。グラハムが新聞社の後継者からジャーナリストを率いる真のリーダーへと進化を遂げていく様子に、ハンナは惹きつけられたという。裁判所がニューヨーク・タイムズに差し止め命令を出した後、一番不安定な時期にあった新聞社と自身のキャリアを危険にさらしてでもペンタゴン・ペーパーズの公表を決めたグラハムの勇気ある決断を知った時、ハンナの中でひらめいた。これこそ、彼女が探し求めていた物語だったのだ。それは、グラハムの人生と国家にとって重要な成長期を描いたストーリーで、複雑なキャラクターやどんでん返しにあふれた物語だった。

「グラハムの回顧録「Personal History(邦題:「わが人生」)」を読んで、彼女の声を伝えたいと思った。でも、単なる伝記作品を書くつもりはなかったから、どのように取り上げるべきか模索していた」とハンナは説明する。「その後ベン・ブラッドリーの回顧録を読んで、ペンタゴン・ペーパーズの公表という重要な決断について知ったの。それで、ワシントン・ポストの将来を決めたグラハムの成長物語という観点から、彼女とブラッドリーの物語を語ることに決めた。リスクをはらんだ行為やドラマチックな出来事がたくさん展開する物語なの」